IMPLANT FAILED

インプラントの失敗とは

インプラント手術を行う目的は、確かな噛み心地を得ること、そして歯の審美機能を取り戻すことでしょう。多くの方が快適な口腔環境を取り戻す中で、期待通りの結果を得られず、失敗したと感じる方もいらっしゃるようです。
ここでは、一般的に言われるインプラントの失敗例について解説してみます。

失敗例には、以下のようなものがあります。

  • 骨とインプラントが結合しない
  • 手術後に、ひどい腫れ、強い痛み、麻痺などが起こった
  • 埋め込んだインプラントの周囲で炎症が起こった
  • 噛み合わせが悪い
  • 人工歯の形や大きさに違和感がある

インプラントが失敗する理由

私たちは、インプラント治療中や治療後のトラブルをできる限り未然に防ぐため、当院だけではなく様々な失敗例についての報告を収集し、その原因を追求しています。インプラント治療が失敗する理由には、次のようなものがあります。

①手術前の診断が不十分

インプラント治療を行うためには、まず診査や検査を十分に行うことが大切です。

  • レントゲンやCT撮影をし、歯や骨の状態、神経や血管の走行を隅々まで調べる
  • お口全体の噛み合わせをチェックする
  • 血液検査から健康状態を確認し、病歴や服用薬、生活習慣なども把握する。
こうした手術前の診断が不十分だと、手術によって、神経や血管を傷つける、血圧や心拍の異常が起こる、または治療後の噛み合わせがあわないようなことが発生します。
②治療計画に問題がある

インプラント治療を行う目的は、失った歯を人工歯で補う、というだけではありません。その人工歯が「噛む」「発音する」という機能と、「見た目に美しい」という審美の役割を果たし、長く機能し続けることにあります。その目的を果たせるように治療計画を立てなければいけません。

患者様の歯や骨の状態を把握し、最終的な人工歯の装着後のことまで想定して、インプラントの埋める位置や方向、サイズなどを決めます。歯科医師の知識や経験が問われる重要な作業で、計画に問題があればその後の処置に何らかの影響が出ます。

③インプラント埋入時の技術的な問題

実際の手術で計画通りに埋入できるか、という歯科医師の技術力も問われます。インプラントを埋める位置や角度、深さを3次元的に正確に把握し、計画通りに穴をあける(ドリリング)ことは、かなりの訓練が必要です。それと同時に、ドリリングによる火傷を防ぐ、神経や血管を傷つけないなど、慎重さも要求されますし、なるべく手早く手技を進める必要もあります。手術にかかる時間は、患者様の体への負担に比例するからです。

最近では「サージカルガイド」という、インプラント埋入をサポートするシステムもありますが、これは技術力のある歯科医師が補助的に使ってこそのシステムです。どれほどCTで精査し、コンピューターで解析しても、実際の骨の状態を100%把握できるものではありません。診査していた以上に炎症が内部に進行していたり、骨質が想定以上に悪かったり、あるいは手術中に患者様の体調に異変があったりと、思いがけないことが起こる場合もまれにあります。そのときに異変に気づかなかったり、無理に計画通りに進めたりすると失敗や事故につながります。まず患者様の安全を第一に優先し、計画を変更したり場合によっては中止したりする臨機応変さも大切です。

技術力があるということは、計画通りに行うことでもあり、計画通りではない事例にも適切に対応できるということでもあります。

④埋めたインプラントの周辺で感染症が発生する
術後はお顔が少し腫れる方がいます。通常は長くても10日程度で腫れは引きますが、まれに腫れが続き、喉元が腫れて呼吸困難になる方もいます。10日以上も腫れが続くようであれば、口腔内の炎症によって、感染症が起きています。感染症は、お口の中の細菌や手術室の環境、手術で使用する器具などから細菌感染します。手術前には感染を防ぐための徹底した準備が必要です。
⑤インプラントが骨と結合しない(インプラント脱落)
インプラントが骨と結合しない理由としては、いくつも考えられます。手術前の計画不足、準備不足、診断不足、ポジショニングの間違い、固定が不適切などは術者側の問題です。また、患者様の骨質が粗造である、強く噛む癖がある、また先天的な体質、喫煙習慣、インプラント周囲の炎症、服用薬の影響なども考えられます。これらの原因が、複合的に働き、インプラントが骨に結合しないという現象が起きます。手術後数ヶ月で骨結合していないことが分かる場合もあれば、数年たって脱落することもあります。
⑥インプラント周囲炎が起こる
インプラントの周囲の組織が細菌感染して、歯周病のような症状になるのが、インプラント周囲炎です。細菌感染を起こすと、天然歯よりも症状は進行しやすく、脱落を招きやすくなります。周囲炎が起こる主な原因は、口腔内のプラークや歯垢に存在する細菌からの感染です。また、強く噛みすぎることも原因です。炎症が歯肉にとどまっていれば治療によって症状を改善し健康な状態に戻せますが、骨にまで炎症が進行するとインプラントが脱落することがあります。
⑦人工歯でのトラブル
埋め込んだインプラントには、機能的な噛み合わせになるように、人工歯を取り付けます。人工歯は、正しい噛み合わせになり、かつ、見た目にも美しく設計します。噛み合わせ不良は、インプラントや周囲の歯に悪影響を及ぼす結果ともなりますので、精密に作製し、正しいポジションに装着することが重要です。
⑧メンテナンスが不十分

メンテナンスとは、インプラント治療が終了した後のお手入れのことです。メンテナンスの仕方は2つ、自宅で行う歯磨きと、歯科医院での定期検診です。

歯磨きは、プラークコントロールのために行います。歯磨きが不十分だと、インプラントの周囲にも汚れがたまり、歯周病のような症状(インプラント周囲炎)が起こります。

歯科医院でのメンテナンスでは、インプラントの異常やネジの緩みがないか、人工歯のすり減り具合はどうかなどを見ます。ご自身では気づきにくいちょっとした変化を放置すると、それらがやがて人工歯の破損やインプラントの脱落の原因となります。そうした失敗を予防するため、メンテナンスは非常に重要です。

⑨治療に対する期待が現実とそぐわない
インプラント治療を行う前には、歯科医師や歯科衛生士が、患者様にどのような処置をするのか、治療期間や費用なども説明します。また、治療のメリット、デメリットや治療に伴うリスクについても説明し、理解してもらいます。こうした説明が不十分だと、患者様の考えと手術結果に違いが起こり、トラブルを発生させるかもしれません。メリットばかりを強調して患者様に過度に期待させたり、デメリットやリスクの説明が不明確で理解が得られていなかったりすると、治療の経過や結果が患者様にとっては受け入れがたくなります。歯科医院側は十分に説明を行い、また患者様もわからない部分は遠慮せず質問して、納得するまで説明を受けてください。
⑩治療後に患者様に自覚症状が表れる
明らかに原因となる病気がなくとも、何となく不調を感じることを、不定愁訴と言います。まれに、インプラント治療を行ってから、不定愁訴を感じる方がいます。一例としては、口が渇く、耳鳴りがするなどの症状です。これはインプラント治療に問題があるわけではなく、お口の悩みから解放されたことでそれまで意識しなかった別の症状を自覚するようになるということのようです。こうした患者様にとっては、インプラントでの失敗と感じるかもしれません。生活習慣を変えたり気分転換をしても改善されなければ、症状に対応した医院で検査を受けてください。

当院でのリカバリについて

このように、インプラント治療の失敗と呼ばれるトラブルは様々あり、その原因も多様です。私たちはできる限りトラブルの原因をなくし、失敗を起こさないよう十分に配慮をして治療を行なっています。

しかしそれでも起こってしまうトラブルもあります。その際には、再手術や人工歯の取り替えなどの対応をし、患者様に満足のいく結果となるようリカバリを行っています。

古いインプラントに不具合が生じた場合や、
他院でのインプラント治療についてのご相談も承ります。

インプラント治療に関連して生じたトラブルは、まずはその治療を行なった歯科医院に相談するのが適切です。インプラント治療前後の経過や、使っているインプラントのメーカーや情報など、他院ではわからないからです。

しかし、引っ越しなどのために別の歯科医院に相談しなければいけない状況もあります。そうしたご相談も当院にお気軽にご連絡ください。できれば、受けたインプラント治療についての情報を、事前に歯科医院からもらっておいて教えていただけると助かります。

また、インプラント治療をお考えの方、別の歯科医師の意見を聞くこと(セカンドオピニオン)は、治療に対する理解を深め、トラブルを防ぐためにも大いに役立つと考えます。当院でもご相談を受けておりますので、お気軽にご連絡ください。