総入れ歯が合わない方へ|全顎インプラントという選択肢と、その条件
[2026年09月07日]
総入れ歯を作り直しても、やはり痛くて噛めない。ずれるのが気になって人と食事に行けなくなった。接着剤を使わないと安心できない——愛媛県今治市の中平歯科医院には、こうしたお悩みで来られる方が少なくありません。
入れ歯は歯ぐきの上に乗せて使う装置ですので、支えている歯ぐきと骨が変化すれば、どうしても合わなくなっていきます。調整で改善することも多い一方、繰り返しても解決しない場合があります。その先の選択肢として、あごの骨に土台を埋め込んで全体を支える方法があります。
この記事では、その方法がどういうもので、どんな条件が必要で、費用と期間がどれくらいかかるのかを整理します。良い面だけでなく、負担や制約についても正直にお伝えします。
目次
- 入れ歯が合わなくなるのは、支える側が変わるから
- 全体を、少ない本数の土台で支えるという考え方
- その日のうちに、仮の歯が入ります
- 誰にでもできる治療ではありません
- 入れ歯と比べて、何がどう変わるのか
- 費用と期間について
- 入れたあとが、本当の始まりです
- まとめ|条件を確かめるところから始めます
1. 入れ歯が合わなくなるのは、支える側が変わるから
入れ歯そのものは、時間が経っても形が変わりません。ところが、それを支えている歯ぐきと、その下にある骨のほうは変化していきます。歯を失った部分の骨は、噛む刺激が伝わらなくなることで少しずつ痩せていきます。作ったときはぴったりだった入れ歯でも、土台の形が変われば、次第にすき間ができて動くようになります。これが合わなくなる最大の理由です。
痩せるほど、支える面積が減っていきます
総入れ歯は、歯ぐきとの吸着と、あごの土手の形で維持されています。骨が痩せて土手が平らに近づくほど、引っかかる場所がなくなり、支える力は落ちていきます。長く入れ歯を使ってこられた方ほど、この変化が進んでいることが多く、調整だけでは追いつかなくなります。
▲ 入れ歯は変わらず、支えている側が変わっていきます
2. 全体を、少ない本数の土台で支えるという考え方
失った歯の数だけインプラントを埋め込む必要はありません。あごの骨のうち、しっかりした部分を選んで数本の土台を埋め、その上に連結した人工歯を固定する方法があります。橋の橋脚と同じ考え方で、要所を押さえれば全体を支えられます。この考え方をとることで、手術の負担も費用も抑えられます。
傾けて埋めることで、骨のある場所を使えます
奥のほうは骨が薄く、まっすぐ埋められないことがあります。そこで、土台を斜めに傾けて埋め込み、骨の厚みがある部分を利用する方法がとられます。これにより、骨を増やす処置をせずに済む場合があります。詳しくはワンデイインプラント®とAll-on-4のページをご覧ください。
▲ 失った歯の数だけ埋め込む必要はありません
3. その日のうちに、仮の歯が入ります
手術をしてから人工歯が入るまで歯がない期間があるのではないか、というご心配をよくいただきます。全顎を支える方法では、手術当日に連結した仮の歯を固定できる場合があります。歯がないまま過ごす期間を作らずに済むことが、この方法の大きな利点のひとつです。
ただし、その日から硬いものを噛めるわけではありません
仮の歯が入っても、骨と土台が結合するまでは強い力をかけられません。数か月のあいだは、やわらかいものを選んでいただく必要があります。「その日に噛める」という表現には、こうした前提があることをご理解ください。最終的な人工歯は、結合を確認してから作ります。
▲ 期間の大半は、骨と土台が結合するのを待つ時間です
4. 誰にでもできる治療ではありません
この方法には条件があります。土台を支えるだけの骨があること、歯ぐきに強い炎症がないこと、全身の状態が手術に耐えられること。これらが揃わない場合、そのままでは行えません。骨が足りない場合は増やす処置を先に行う、あるいは別の方法をご提案することになります。
全身の状態は必ず確認します
糖尿病の管理状況、骨に関わるお薬の服用、血液をさらさらにするお薬、喫煙。これらは治りに影響することが知られています。服用中のお薬がある方はお薬手帳をお持ちください。必要に応じて、かかりつけの医師と連携させていただきます。
▲ 条件が整わない場合は、別の方法をご提案します
5. 入れ歯と比べて、何がどう変わるのか
もっとも大きな違いは、支え方です。入れ歯は歯ぐきの上に乗せますが、全顎インプラントは骨に固定します。そのため、ずれる・浮くという不安がなくなり、噛む力もかけやすくなります。一方で、外科手術が必要で費用も大きく、手入れの手間も増えます。どちらが優れているという話ではありません。
取り外し式という中間の選択肢もあります
少ない本数の土台を埋め、その上に入れ歯を取り付けて固定する方法もあります。取り外して洗えるため清掃しやすく、費用も抑えられます。当院ではインプラントオーバーデンチャーのページでご案内しています。ご希望と条件に応じて、間をとる選択も可能です。
▲ どちらにも利点と負担があります
6. 費用と期間について
全顎インプラントは自由診療(保険適用外)です。当院の料金表では、手術費と最終的な人工歯を合わせて250万円から585万円の幅で提示しています。術式と、選ぶ人工歯の種類によって変わります。これに加えて、骨を増やす処置が必要な場合には1か所につき5万円から20万円が加わります。
医療費控除の対象になります
インプラント治療にかかった費用は医療費控除の対象として扱われます。年間の医療費を合算して申告することで、税負担が軽くなる場合がありますので、領収書は必ず保管しておいてください。ご家族の分も合算できます。詳しくは料金表のページと、所轄の税務署の案内をご確認ください。
▲ 同じ治療名でも、条件によって金額の幅があります
7. 入れたあとが、本当の始まりです
インプラントは人工物なので虫歯にはなりません。しかし、それを支えている歯ぐきと骨はご自身の生きた組織です。ここに炎症が起きれば支えは失われ、せっかく入れたものを失うことになります。しかも痛みが出にくいため、ご自身では気づけません。
手入れと定期的な確認が欠かせません
連結した人工歯の下は、通常の歯ブラシでは清掃できません。専用の道具を使った手入れ方法をお伝えします。あわせて、定期的にお越しいただき、歯ぐきの状態と噛み合わせを確認します。時間と費用をかけたものだからこそ、その後の管理に意味があります。
▲ 両方をご理解いただいたうえで選んでいただきたいと考えています
まとめ|条件を確かめるところから始めます
総入れ歯が合わなくなるのは、入れ歯が変わるからではなく、支えている歯ぐきと骨が痩せていくためです。調整や作り直しで改善することも多い一方、土手が平らに近づくほど支える力は落ち、繰り返しても解決しないことがあります。その場合の選択肢が、あごの骨に埋めた数本の土台で全体を支える方法です。
手術当日に仮の歯を固定できるため、歯がないまま過ごす期間を作らずに済みます。ただし骨と結合するまでの数か月は強い力をかけられず、やわらかいものを選んでいただく必要があります。また、骨の量や全身の状態によっては行えないことがあり、その場合は骨を増やす処置や、取り外し式のインプラントオーバーデンチャーなど別の方法をご提案します。
自由診療(保険適用外)であり、費用も手術の負担も小さくありません。効果や経過には個人差があります。まずはCTを含む検査で、ご自身の骨と全身の状態がどうなっているかを確かめるところから始めていただければと思います。セカンドオピニオンとしてのご相談も承っています。愛媛県今治市の中平歯科医院までお気軽にどうぞ。
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自由診療(保険適用外)に関する説明
治療内容:全顎インプラント(ワンデイインプラント®/All-on-4 を含む)。あごの骨に埋め込んだ複数のインプラント体で、連結した人工歯を支える自由診療の治療です。
費用:手術費と最終的な人工歯を合わせて250万円〜585万円(術式と人工歯の種類により変動)。骨増生が必要な場合は1か所につき5万円〜20万円、CT撮影分析3万円、静脈内鎮静法10万円が別途かかります。詳細は料金表をご確認ください。
標準的な治療期間・回数:検査から最終的な人工歯の装着まで、おおむね6か月〜12か月。来院回数の目安は10回前後です。骨の状態や追加の処置の有無によって変わります。
主なリスク・副作用
- 外科手術に伴い、術後に腫れ・内出血・痛みが生じることがあります
- 下あごの神経や上あごの空洞に近い部位では、しびれや炎症が起こる可能性があります
- 骨とインプラント体が十分に結合せず、埋め直しが必要になることがあります
- 喫煙・糖尿病・骨に関わる薬の服用は、治りに影響することが知られています
- 手入れが不十分な場合、インプラント周囲炎により支えを失うことがあります
- 人工歯の破損やねじのゆるみが生じることがあり、修理や作り直しが必要になる場合があります
- 治療後も定期的な確認と清掃を継続していただく必要があります
出典・参考資料
- 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
- 公益社団法人 日本口腔外科学会
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯・口の健康」
- 国税庁 タックスアンサー「医療費控除の対象となる歯の治療費」
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療の経過・効果には個人差があります。本記事で扱う治療には自由診療(保険適用外)が含まれます。詳しくは歯科医師にご相談ください。
